学術論文

基本情報

氏名 鴇田 拓哉
氏名(カナ) トキタ タクヤ
氏名(英語) Tokita Takuya
所属 大学 文芸
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

発行又は発表の年月

2006/09

学術論文名

電子資料を対象にしたFRBRモデルの展開

単著・共著の別

単著

発行雑誌等又は発表学会等の名称

日本図書館情報学会誌

第52巻

第3号

開始ページ

173

終了ページ

187

概要

近年、図書館目録領域の議論において、図書館目録が対象とする書誌的世界を概念レベルで捉えて、目録規則などを用いて作成された目録データについての検討や、図書館目録領域の議論全体に対する再検討に利用する試みがなされている。その代表例に、IFLAによる報告書である『Functional Requirements for Bibliographic Records (書誌レコードの機能要件)』で示されているモデル(FRBRモデル)がある。FRBRモデルは個別の知的・芸術的創造であるwork、workをテキストや画像などの形式で表現したexpression、expressionを図書やCD-ROM等で物理的に具体化したmanifestation、manifestationの個別のコピーにあたるitemの4つの実体で構成されるモデルで、今後の図書館目録領域の議論における基盤として期待されている。
 本論文では、FRBRモデルを電子資料に対象を限定した場合のモデルの展開(改良モデルの作成)を試みた。モデルの展開に反映させるべき要件に、(1)キャリアの有無を柔軟に表現できる、(2)内容構成とファイル構成(対象資料の論理的構造と物理的構造)を同時に考慮できるという2点をあげた。これらの要件は、図書をはじめとするすべての資料タイプを想定して作成されたFRBRモデルでは重視されていない、電子資料の特徴である。併せて、FRBRモデルを解釈する視点(モデル全体に通ずる、実体設定と解釈についての暗黙裡の前提)として「種別展開の視点」と「部分包含の視点」という2つの視点を提案し、上述の2つの要件に応えるモデルの展開に適宜適用した。種別展開の視点はFRBRモデルでも採用している視点と位置づけられるが、部分包含の視点に該当する内容は考慮されていない。
 (1)に対する展開では、種別展開の視点を適用し、work、expression、expressionがあるファイル形式でファイルに固定化されたfile、fileの個別のコピーであるcopy、copyが物理的媒体を伴ったpackaged copyの5つの実体からなるモデルを提案した。一方、(2)に対する展開には、部分包含の視点を適用した。その際に(1)で提案したモデルを採用し、内容構成とファイル構成の対応関係の事例を示すとともに、モデルの妥当性を確認した。