大規模で複雑な金融機関の破綻処理においては、対象となる金融機関の資産、負債の価値の評価(valuation)が大きな課題となる。欧州のBRRDでは破綻処理の過程でvaluation 1~3と呼ばれる3つの評価が求められているが、不確実性が高い状況下において資産、負債の経済的価値を破綻処理シナリオに応じて迅速に算定しなければならないvaluation 2は特に難易度が高い。
こうした状況に鑑みれば、(危機時ではなく)平時において、評価プロセスを迅速化、効率化するための準備を進めておくことが重要である。この観点からBRRDの関連規則やガイダンスを確認すると、例えば、評価者の任命に関しては、候補者リストの作成や合意すべき事項の事前の明確化など、評価者選定までの時間短縮化のための工夫がなされている。また、資産、負債の評価に必要となる情報の標準化や、金融機関が利用している経営情報システム(MIS)を有効活用する「評価MISアプローチ」の採用などによって、評価プロセス自体も効率化されている。
破綻処理のための評価においては、当局、株主、債権者、納税者など幅広い利害関係者が想定されるため、評価の客観性、公正性の確保が大きな課題となる。破綻処理のための評価プロセスについて関係者が議論を深めておくことは、評価を巡る不確実性を低減させるうえで重要である。