本研究は継続研究である。今年度は、ファッション企業の「残在庫」を活用して新たな作品や表現を生み出すことを主な目的としたプロジェクトを行い、2つの成果を得ることができた。まず、これまでもアップサイクル作品は制作してきたが、デザインプロセスの概念的枠組みが十分に整理されていなかった。今回のプロジェクトでは、現在のファッショントレンドを反映したそのまま着用できるリアルクローズであるためか、デザインによる価値創造のプロセスには従来よりも時間を要した。この過程から、アップサイクルのデザインプロセスは、素材の観察、発想、そして造形創造の繰り返しというサイクルであることがわかった。
第二に、本プロジェクトは、これまで同様、関わった全ての学生から、企画、商品化、表現の観点から高い評価を得た。特に、2年生から履修できる本プロジェクトは、約8割の学生が2~3年継続することを選択し、本プロジェクトへの学生の関心の高さが伺える。また、今年は、複数の学生が自らの制作過程を個人のSNSで発信するなど、積極的な取り組みが見られた。リアルクローズブランドへの親しみが、これらのアイテムを斬新なデザインにアップサイクルすることに関心を深めたと推察する。
宮武 恵子、石塚 里菜