本章では、考現学の始祖、今和地郎を筆頭とする路上観測の系譜をたどり、その意味と意義を考察した。その結果、路上観測調査が必要とされるのは、社会の大きな変動、経済のしくみや担い手、あるいはメディアや流行の流れが変容するときであることが明らかとなった。特に、1990年代以降のストリート観測では、刻々と変化するファッションの記録の積み重ねの重要性はもちろん、現前の観測結果を瞬時に各種のメディアに公開することで、流行の実態を即座に公表し、閲覧者や読者が展開する今後の流行の方向性を操舵する役割を担いはじめており、観察結果を即座に投げかけることで、生活者の次のライフスタイルやトレンドを誘発する引き金として機能しはじめていることを本論の考察により確認した。 pp.73~86 共著者:渡辺明日香・城一夫