本稿では,デジタル衣服の技術的背景となるガーメントシミュレーション研究の歴史的な経緯を振り返り,俯瞰的に整理した。まず、3D CG研究としてのクロスシミュレーションが始められ、物性の反映と実物との比較検証が行われるようになったことを示し、その後、物性に起因する数値計算の不安定性、交差判定・反発処理の計算量、Untangling 処理と重ね着、シワの表現や非線形性・異方性の反映により、ガーメントシミュレーションの精度が向上したことを述べた。また、機械学習を応用したシミュレーションや、糸レベルシミュレーションなどの新たなガーメントシミュレーションについても紹介した。最後に、被服設計のためのガーメントモデリングとデジタルで衣服をつくることの展望について論じた。(古川 貴雄, 安 星奈)