「古典教育と黄昏のイギリス帝国」
池田嘉郎編『第一次世界大戦と帝国の遺産』(東京、山川出版社)
第一次世界大戦の終結を契機として、「帝国」と呼ばれる様々な支配形態が姿を消し、現代的国際秩序が擡頭したと理解されている。しかしその底流には今日なおイギリス帝国の残滓と、その帝国支配を支えた価値観や世界観が潜む。拙稿ではその「澱」をイギリス近代の古典教育の在り方と教育内容の所産であると考える。近代イングランドにおける古代民主政理解、古代「帝国」(的支配)に対する向背、古典語教育の推移を概観し、インド(帝国)支配を媒介としてイギリス帝国の根柢に古典教育が絡みついてゆく様子を描いた。