綿の細胞壁の基本構造単位は,幅が約5ナノメートルの細長いセルロース結晶である。細胞壁では,このセルロース結晶が互いに平行かつ綿繊維の長軸に対して約35°の傾角で螺旋を描くように配列している。一部の例外を除けば,合成高分子の繊維では分子は繊維軸方向に配列し,綿に比較すれば均質な構造となっている。合成高分子を用いて綿の構造を模倣した繊維が得られれば,綿の優れた特性を再現する,あるいは新たな機能が発現する可能性がある。そこで,本研究では,綿特有の螺旋配向を合成高分子で再現することを検討した。具体的には,溶融樹脂積層型3Dプリンタ(Fused Deposition Modeling 3D Printer, FDM-3Dプリンタ)を利用することを着想し,検討した結果を報告した。