3Dプリンティングを用いた付加製造技術(Additive manufacturing,以下AMと略)は,簡便かつ迅速に試作品を作ることを可能とし,製造現場に大きなイノベーションをもたらす技術として注目されている。自動車部品などの工業製品の試作に活用されているのはもちろんのこと,ファッション分野でも多くのデザイナによって利用されている。デザイナの自由な発想による奇抜な造形物をファッションに取り入れるのにAMは最適であるが,一方で,これまでに発表されている作品のほとんどは,樹脂製の鎖帷子のようなものが多く,日常着としての快適性には疑問が残る。ファッションショー用ではない日常着をAMで作ることができるようになると,私達の衣生活が大きく変わる可能性を秘めている。例えば,インターネットでデータをダウンロードし,そのデータを自分の体型に完全にフィトするようにカスタマイズして,AMで服を出力して着る。その日の気温に合わせた保温性の布にカスタマイズするようなことも可能になるかも知れない。材料のリサイクル技術が必要だが,毎日違う服を出力して着れば,ワードローブも洗濯も不要になる。通常の裁断・縫製と異なり,端切れが発生することもないため,省資源にもつながる。このようにAMを用いた衣服作製には大きな可能性がある。本研究では,熱溶融積層方式(Fused deposition modeling, FDM)の3Dプリンタを用いて,新しい布状構造体を試作したので報告した。