2015年ごろより3Dプリンティング(=Additive Manufacturing, 以下AMと略)は,ファッションやアートの分野でも使用が拡大している。3Dプリンタを用いて衣服を自宅で作製することが可能になると、無駄な在庫を持つ必要が無くなるため、社会問題となりつつある衣服の廃棄の問題を解消できる可能性がある。また、縫製ロスも発生しないので本質的にサステナブルな衣服製造方法と言える。一方,その応用はファッションショーでの利用にとどまっており,真の実用化には解決すべき課題がある。これまでAMで作られてきた布は,硬質な樹脂製で肌触りも悪く快適な衣服とは言い難い。この点の改善がまず必要である。もう一つ解決すべき問題は,造形時間である。AMの現状の造形速度は遅く,10 cm角の布状体を造形するのに数時間から数十時間を要する。本研究では、従来の衣服に近い柔軟性を有し、しかも造形速度を改善したAMによる被服製造方法を検討している。すでに、綿などの糸を平行に配列させて平面を充填し、その表面に熱可塑性エラストマーなどの柔軟な高分子をAMでパターン形成することにより新規な布を作りだした。この“第3の布”と言える糸-樹脂複合体は、柔軟かつ、迅速な造形を可能にしている。本発表では、糸と樹脂を一筆書きのように配置して被服を製造できる3Dプリンタの開発について報告した。