問題と目的:奥山(1998)は、性的虐待の定義について、海外では家族内外に関わらず大人から子どもへの性的な行為を“性虐待”と規定していると報告している。本研究では、実態に即したこの定義を前提とする。
子どもに対する性的虐待は、学校現場に限らず、保育所や放課後等デイサービス、学習塾、地域のスポーツクラブなど、子どもに関わるあらゆる現場で起きているため、性的虐待を防いでいく実際的な取り組みが求められる。
子どもへの性的虐待の予防プログラムは効果的であるが、予防プログラムの実践の質によっては、期待したほどの効果が得られない可能性がある。本研究では、性的虐待予防プログラムの実践者養成に効果的な構成内容について比較検討し、考察することを目的とする。
方法:本研究では、性的虐待予防の内容が含まれる3つのプログラムの研修内容に焦点を当て、検討する。
結果:性的虐待予防プログラムの実践は、研修を受けた教師やスクールカウンセラー、外部機関の予防教育者によって行われている。プログラムによって養成にかかる研修時間や研修方法も異なっている。以下、3種類のプログラムの比較である。
CAP:基礎講座 対面3日間(1日約8時間計24時間)、CAPスペシャリスト養成講座 対面3日間(1日約8時間計24時間) 計48時間
生命の安全教育:研修受講の必要性なし。
Child Protection Unit:実践者は、オンデマンド研修90分。その他、管理者研修、全職員研修がそれぞれオンデマンドで90分ずつある。
考察:Christineら(2018)は、研修に費やされる時間が重要で、より長くトレーニングを受けた人は、プログラムを教える可能性が高くなると報告している。研修受講が必要でない「生命の安全教育」は、実践されにくいプログラムとなるが、研修時間を対面式で何十時間も確保することは難しいため、オンラインやオンデマンドなどの工夫も求められる。また、組織の管理者が研修を受講するなどの仕組みは、実装する上で大変効果的である。