玉川大学芸術学部において担当した授業「彫刻Ⅰ」(塑造による人物首像制作)において、学生に授業毎に各自の制作途中の作品を撮影させ(各自のスマートフォン等で、様々な方向から撮影)、各講義でレクチャーした内容や各自制作をとおして得た内容の記録と併せて制作記録を作成させた。「量感」「構造性」「空間」「動勢」等の彫刻における造形概念は(またそれは彫刻に限らず)、感覚に根差すものであることから「指導者から教授されたものを理解する」という姿勢だけでは習得は困難であり、学生自身の能動的な実践と複合的になされる必要がある。しかしまた同時に学生の習熟度を評価することも困難となる。当該授業ではポートフォリオの導入によって、実際の制作の視覚的な記録とその言語化に要点を置き、上記の問題の解消を試みた。「再現的描写」の段階から離れ、「彫刻」を形作るものについて考え作品に反映させていくプロセスを視覚化することで、彫刻の基礎的な造形概念についての理解を深め、また指導側も作品のみの評価と比較して、より客観的に学生の習熟度の評価を行うことができる。またスマートフォン等で撮影した画像記録は授業時間外に気軽に見ることが出来、制作時間外の学習(事前・事後学習)につながる。 塑造制作のみならずその他の芸術系実習授業においても応用が可能であり、その学習効果を期待することが出来る。