当該論文は、大正から昭和40年代に活動した彫刻家新海竹蔵(1897~1968)の彫刻表現とその造形観について、体系的に捉え、明らかにすることを目的としたものである。文献調査、関係者からの聞き取り調査、作品の実見調査を踏まえた考察によって、新海の造形観について体系的に示している。塑造と木彫の双方を手がけた新海は当時また現在において一定の認識を示され、評価を得ている作家と見ることが出来るが、他の同時代作家の彫刻表現に対して昨今学術的研究が活発に行われる傾向に鑑みた際、新海に対するそれは積極的に行われていない現状があり、当該論文の意義はそこにあると言える。先行研究には記載されていない作品や聞き取り調査の内容等、資料としても新たな内容を含んだものである。