学術論文

基本情報

氏名 鴇田 拓哉
氏名(カナ) トキタ タクヤ
氏名(英語) Tokita Takuya
所属 大学 文芸
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

発行又は発表の年月

2010/01

学術論文名

電子資料を対象とした図書館目録に対する概念モデル(博士論文)

単著・共著の別

単著

発行雑誌等又は発表学会等の名称

筑波大学

開始ページ

終了ページ

概要

図書館目録に関わる議論において、書誌データの対象となる資料群やそれに関係する事象(書誌的世界)を概念レベルで捉え、概念モデルの構築を通して議論する試みがある。そのような試みの代表例に、国際図書館連盟による報告書『Functional Requirements for Bibliographic Records』で提示されたモデル(「FRBRモデル」)がある。
 本論文は、電子資料に資料タイプを限定した図書館目録に対する概念モデルの作成を目的としている。これまでの概念モデルの議論は、図書を中心とした理論や実践にもとづいてきた。しかし、今後さらなる増加が確実視される電子資料は従来の資料タイプと異なる特徴を複数備えている。そのため、本論文が試みる、従来の図書を中心とした概念モデルを踏まえつつ、電子資料に限定しその特徴を反映させた概念モデルの作成は大きな意義を持つ。
本論文では、概念モデルに反映させる電子資料の特徴を2つ設定している。1つ目は、ネットワーク系資料のようにキャリアを持たない資料とキャリアを持つパッケージ系資料の両方を表現できるモデルの作成である。FRBRモデルは「work – expression – manifestation – item」の4つの実体から構成される。その中のmanifestationがキャリアを伴うことを前提とした実体であるために、ネットワーク系資料の表現が曖昧となる。そこで、本論文では、manifestationに代わる実体fileを設定し、加えて、ネットワーク系資料、パッケージ系資料に相当する実体copyとpackaged copyを設定した。すなわち、ネットワーク系資料は「work – expression – file – copy」、パッケージ系資料は「work – expression – file – packaged copy」という構図のモデルとなる。
 もう1つは、対象資料のある内容がどのファイル(あるいはキャリア)に記録されているかという対応関係がほかの資料タイプに比べて複雑であり、その対応関係を把握する必要があるという特徴である。
 展開モデルとこれまで作成された概念モデルを比較すると、展開モデルは電子資料の特徴をバランスよく表現しうるモデルであることが確認された。このことから、展開モデルは、電子資料に対する概念モデルの今後の方向性を示したものと位置づけられる。