客家語を共有する漢民族の一支流である「客家」が多く居住する客家四州のひとつである広東省東北部梅州には、客家のシンボルともされる福建省に多く残る、円形土楼、方形土楼に対し、馬蹄形式とも言われる、建物前面を方形土楼とし、その背後に半円形の土楼を組み合わせた囲廊型民居が数多く見られる。それらを現地調査することで、「客家」と一括りにされる彼らの生活形態を各地域における建築的な違いから明らかにした。調査は実測と聴き取り調査を基本とし、実測図面を作成してその空間的特徴を記録すると共ともに、当時、そこで営まれていた生活の実態を記録することができた。梅州の客家民居がなぜ方形と半円形を組み合わせたような形態をとっているかについては、他地域よりも比較的建設年度が新しく防御の必要性が低いことと、教育熱心な客家の人々が優秀な若者を都会に出し、やがて出世したかつての若者によって「故郷に錦を飾る」ために建設された事例が多いことが理由の一つと言われている。