中国南西部、福建省、江西省、広東省の三省省境付近山間部に数多く分布する客家民居は、それぞれの地域により建築上の特色を持っている。当年度、調査研究の対象とした福建省(一部安徽省の客家民居も調査した)は、土楼型と呼ばれる、比較的原初的な素朴な建築様式ものが多い。壁は生土造(赤土に米由来のノリを混ぜて固める構法)が多く、屋根架構は単純なものである。奥深い山間部に埋もれるように配置されている集落は、多くの人が思い描く客家民居のイメージで、注目度は高い。一方、急速な経済発展の影響、近代化は山間部にも及び、かつて見られた、風土とともにある住生活の姿は失われつつある。現況を記録すること、そして、時代の変化とどう折り合いをつけ、伝統的民居の未来の姿があるのか考察を行っている。
参照:D10