東京藝術大学建築科にて、教員、学生に向けて、著者の研究テーマである、ドイツ・ワイマール時代(1919-1933)の集合住宅の構成的特徴とその世界観について、その内部環境と外部環境の関係性を軸に研究発表をした。主にベルリンにある集合住宅について紹介をし、それらを設計したブルーノ・タウトについてと、タウトの共同設計者としてランドスケープデザインを担当したレーベレヒト・ミッゲについて発表をした。タウトやミッゲの時代は、黄金の20年代として狂乱的で華やかな文化が咲き乱れる一方、直前の第一次大戦の痛手から立ち直る過程にあり、食物の確保供給も集合住宅の計画に盛り込まれている。外部空間には各戸専用のクラインガルテン=小さな庭が設けられ、そこで根菜や葉野菜が栽培されることが意図されていた。また、人糞を肥料にして作物の生育の助けにするアイデアも提案されており、小さな循環型の環境連鎖がつくられている。クラインガルテンはキッチンスペースとも連携が取られ、当時提唱されたフランクルターキュッヘ(現代におけるシステムキッチンの基になった)とともに新しい時代の都市居住のあり方を提唱している。当時ドイツにつくられた集合住宅団地は、ジードルンク=植民地と称され、近代以前には人が住まなかった都市郊外を開拓し、そかで新たなミクロコスモスをつくることが計画されていた。著者は、ドイツ・ベルリンで研究資料を収集し、考察した成果を発表すると共に、現地調査により明らかになった、現代におけるそれら住戸の利用状況、住まい方、近代住宅団地が今日的環境の中で意味するものについて考察し発表した。
参照:ポートフォリオB1、B2、C4