本書は今回初めて邦訳されたものであり、女性の高等教育発展の国際的比較・ジェンダー学の観点から貴重な史料である。
英国の女性教育運動家であったEmily Davies (1830-1921)は、1868年に英国の学術団体で当時の社会問題が議論される場として、強い影響力を持つ社会科学振興全国協会 (National Association for the Promotion of Social Science (NAPSS))の第12回年次大会(1868年9月30日から10月7日、於バーミンガム)にて、“Some Account of a Proposed New College for Women” (女性のために提案された新しいカレッジに関する若干の報告)と題した講演を行ない、従前より進めていた新たな女子大学の創設への支援を強く訴えた。本書はその復刻と全訳(パラグラフ毎の対訳)である。
伝統を重んじ保守的な英国において、学修科目に至るまでの男女均等の貫徹を目指し、後にこれを実現したデイヴィスの叫びの中に「女性教育発展のみちしるべ」を読者に感じて取って頂けるならば訳者にとって大きな喜びである。