本書はアメリカの会計学者Henry Rand Hatfield (1866年11月27日生、1945年12月25日没)による"Modern accounting : its principles and some of its problems." 1922年版(初版1909年)(以下『現代会計』)の「序章」(Preface)、「目次」(Contents)、「第一章 複式簿記の原則」(The Principles of Double Entry Bookkeeping)、「第二章 複式簿記の原則(続き)」(The Principles of Double Entry Bookkeeping (Continued))、「第十六章 原価計算」(Cost Accounts)の逐語訳である。出版時の著者の肩書はProfessor of Accounting, University of Californiaで、著者は1909年から1945年の逝去までこの職にあったとされ、没後16年の1961年に、1950年創設のアメリカの会計殿堂(Accounting Hall of Fame)に歴代5番目の殿堂入りを果たした。
著者は実務に即した会計学の研究に加えて会計教育の先駆者としても知られ、会計の道を志す学徒に向けられた著者の熱意が本書の特に第一章・第二章に感じられる。また、事業開始の例として25頭の馬を2,500ドルで購入とあり、『現代会計』が刊行された頃のアメリカの社会状況を彷彿とさせてくれる。更に、簿記の初学者が必ず通過する「なぜ左側を借方と呼び、右側を貸方と呼ぶのか?」という素朴な疑問について、著者はこれを正面から取り上げ、ドイツ会計学に由来する自らの説を丁寧に説明し、そこには公刊後100余年が経過していることを感じさせない知的な新鮮さがある。
本書はパラグラフ毎に英語の原文に訳者による直訳が続く形式にしているが、これは読者各位に原著に接して頂きたいという訳者の思いからである。
また、本書は大学・短期大学の会計学領域の初級レベルの専門書講読テキストとして用いることを主な目的としている。