本研究は、昭和初期に日本の高等女学校実業科および実科高等女学校で使用された「女子簿記教科書」の分析を通じて、当時の日本女性がどのように簿記・会計知識を学んでいたかを明らかにすることを目的とする。この教科書は、東京商科大学名誉教授で商学博士の吉田良三氏による文部省検定済の入門教科書で、単式および複式簿記の基礎を豊富な例題と共に解説している。また、家計管理に役立つ「家計簿の附け方」にも言及し、女性の実生活に直結する教育内容を含む点が特徴である。具体的には、(1)当時の女性向け簿記教育の状況、(2)男子向け教科書との比較、(3)一般的な家計簿との関連、(4)戦後の変遷、(5)現代簿記教育における本書の活用可能性について考察する。