本研究は, 小泉(2024d, 2024e)の研究を基盤に, 吉田良三著『女子簿記教科書』(1936)を通して昭和前期における日本女性の簿記・会計学教育の実態を, SDGsターゲット4.3に掲げられた「平等なアクセス」の視点から検討することを目的とする. 当時の時代背景と女性教育制度の変遷を年表に基づいて整理し, 女性が簿記・会計学を学ぶ機会が一定程度存在していたことを明らかにした. また, ジェンダーの視座から, 英国の女性教育活動家エミリー・デイヴィスと福澤諭吉の『新女大学』における教育理念の対比を通じて, 吉田のジェンダー観と本書刊行の意義を考察した. 本研究は, 昭和前期の女性学習者の簿記教育に焦点を当て, 現代の会計学教育に新たな示唆を与えるものであり, 特に女性学習者向けの教育の発展に寄与することを目指す. また, これらの知見は, 現代における女性の職業的活躍の考察にも資する.