「漱石書簡文に見られる文体差ー対人関係を中心にー」
『表現研究』表現学会
第99号
夏目漱石の書簡文の文体を、上下と親疎の関係別(妻、友人、門下生、仕事関係者)に、文末文体、頭語と結語、自称と対称、署名と宛名(敬称含)などを焦点に調査し、その特徴や相違点について検討した。その結果、対人関係による文体の規範をふまえつつも、各書簡にふさわしい表現・文体を用いるという漱石の文体意識の高さが明らかになった。また例外として友人の正岡子規宛ての 書簡文の文体が極めて特異であったことを指摘した。