ピエロ・デッラ・フランチェスカのアレッツォ、サン・フランチェスコ聖堂の『聖十字架伝』壁画は1452年と66年の間に位置づけられているが、実際の制作年は明かでない。しかし同じ頃フィレンツェで活動し、1459年に死亡したとされる画家ジョヴァンニ・ディ・フランチェスコの作品に同壁画からの引用が認められるところから、壁画制作は1458年に記録されているローマ滞在以前に終了している可能性が高いことを指摘した。この結果壁画に認められる様式的な差異は、記録されているローマ滞在とは別の滞在に起因する可能性、それが1453年のビザンティン帝国滅亡とそこから派生する対トルコ戦争の企図を暗示する可能性をも合わせて指摘した。