アレッツォ、サン・フランチェスコ聖堂にあるピエロ・デッラ・フランチェスカの《聖十字架伝》壁画連作については数多くの研究がなされてきたが、壁画のみを単独で考察したものがほとんどでフランチェスコ会との関連で考察したものは意外なほど少ない。同修道会との関連を考慮に入れた時、《聖十字架伝》はフィレンツェ、サンタ・クローチェ聖堂の内陣装飾と密接な関連があり、十字軍というニュアンスを持っていることがわかる。しかし双方の描写の相違を検討すると、サンタ・クローチェ聖堂での制作時とは異なる状況があり、それゆえ当時とは異なる意味、すなわちトルコとの戦いを暗示していることが明らかになる。