1990年代にピエロ・デッラ・フランチェスカ研究は飛躍的に発展し、膨大な数の研究が公にされた。本稿はその概要を報告するものである。近年の研究の結果『聖十字架伝』の制作年代やその表現内容についても従来とは異なる見解が出てきた。従来1452年と66年の間に位置づけられ、58,59年のローマ滞在による中断があったかどうかという点が問題となっていたが、ジュゼッペ・チェンタウロの研究により、1457年頃に制作が開始され、59年以降も政策が継続された可能性が高まってきた。またマウリツィオ・カルヴェージは1456年にヨーロッパ諸国連合軍がベオグラードでオスマン・トルコに対しておさめた勝利を記念するものという説を提示した。