西欧の絵画において風景画の成立はルネサンスの時代とされている。その背景には当時の古典文学への関心があると考えられている。即ち、ウェルギリウスの『牧歌』等古代の詩、それに触発されて書かれたサンナザーロの『アルカディア』などの同時代文学作品が風景画の成立、わけてもその夕暮れのメランコリックな雰囲気の表現に大きな影響を及ぼしたとされている。しかしながら、とりわけ夕暮れを思わせる空の描写はそれより半世紀遡ることができる。それらは通常のキリスト教主題の背景として現れており、風景画の成立に古典文学のみならず、キリスト教主題の表現もまた影響を与えた可能性があることを主張した。