東京国立博物館所蔵のキリシタン遺品は主に幕末の信徒摘発の際に押収されたさまざまな物品からなる。それらの中には何点かのブロンズ製小型十字架が含まれている。その中に、磔刑のキリストを表すが、キリストが死んでおらず、生きて情報を仰ぎ見る姿勢のものがある。このモティーフはミケランジェロが創始したものであり、この十字架の図像の淵源が遠くルネサンスのイタリアにまで遡ることを示している。この十字架が日本にもたらされて経緯については若干の調査を試みたが、明らかにすることはできなかった。しかし、キリシタンを取り巻く状況から判断して、戦国時代末期に来日した宣教師たちによってもたらされたと推定される。