評論家・批評家として名高いスーザン・ソンタグが2000年に発表した『アメリカで』は、日本のみならずアメリカ本国でさえ取り上げられることが稀な十九世紀アメリカの演劇事情を活写した小説である。本作品をいち早く論じた目的は、アメリカ社会・アメリカ文化に寄与した演劇の黎明期の実相を明らかにすること、そして、アメリカ小説で描かれてきたヒロインの系譜に「女優」という職業を選んだ女性たちが存在する点に着目し、女優になりたがるヒロインを通して、19世紀末から20世紀初頭のアメリカ社会・文化・文学の断面を批評的に論じることである。本論考は、以下同誌三号にわたって連載した緒論文の最初のものである。
掲載頁pp.53-72