ナサニエル・ホーソンの四つの長編を、語り手を中心とした物語論の観点から分析した。ホーソンの作品構造を、先行批評でほとんど試みられなかった物語論的手法で分析することで、イギリスを中心として発展してきた小説形式「ノベル」と対峙し、アメリカ文学に特徴的な小説形式「ロマンス」の持つ虚構性がホーソン作品の特質として際だつ。物語形式に自覚的であったホーソーンの長編作品が、極めて先駆的な「メタ=フィクション」性を有していることを、四つの長編の語り手の性質が「編集者的語り手」から「創作者的語り手」に変質・成長していったと捉えて論証することで明らかにした。