本研究は、2015年より行っている従来の伝統的和装教育に、新たにファッション的視点を加えることで今後の和装教育の可能性について考察することを目的とする。方法は、教育的効果と学生の着物に対する意識を検討するために、2015年入学時の1年次の授業開始時アンケートと、2019年授業終了後アンケート調査を、質問紙回答法、選択、記述式で行い集計した。結果は、4年間の学びで和服に関する知識の習得、興味、和服を着たいと思うようになったかの問いに、約90%が習得でき、興味を持ち、着てみたいと思うようになったと回答を得た。また着物のコーディネートは伝統にとらわれずに自由に着装できると考えるようになった学生が約90%となった。さらに記述回答からショーにモデルとして参加した学生は、和服について、新しい気づきや個性的表現で着物を自然に着装するようになったことが明らかとなった。ショーという日常にはない場面で、着物着装の基本だけに捉われることなく、時間をかけ小物や着物の丈を検討することで新しい発見ができたのだと推測する。また、入学当初からファッションを学びたいので、全く着物に興味がなく、和服関連授業を全く履修しなかった学生が、日常のファッション・アイテムと同じような意識で和服と向き合い、コーディネートを検討していた。一方見学のみの学生では着物に対する意識は前向きになったが、日常で着物を着るという意識や行動にまでは至らない記述が多くみられた。このように和装実践教育を行い、ファッション的視点を取り入れることで、着物の着装を楽しむ層が広がることが示唆された。(田中 淑江,髙橋 由子,宮武 恵子),2019年5月19日,日本女子大学