近年ファッション産業界で注目されているデジタルトランスフォーメーション(DX),ファッションAIなどを取り上げて研究をすすめた.先行研究を基にして,本稿ではファッションデザイナーの制作プロセスにおいて必要な感性を明らかにすることを目的とした.デジタル化の背景を踏まえ,制作プロセスを辿りながら,必要な感性を導き出し,直近の課題を明らかにする.研究方法は,ファッションデザイナーの一般的な制作プロセスについて,文献および先行研究を参照して整理する.業界経験の知見を基に,ファッションデザイナーに必要な感性を抽出する.分析結果から,ファッションデザイナーの制作プロセスにおいて必要な感性は,「創造の感性」であり,「描画の感性」と「造形の感性」に分類できる.素材と形(シルエット・ディテール)を頭に思い浮かべながら,知識と感性が重要であることは明らかである.デジタル化時代においては,「創造の感性」,換言すると「描画の感性」と「造形の感性」についての検討が必要である.例えば人工知能の感性表現学習,専門性を重んじた創作実証研究などがあげられる.またファッションAIと人間(専門職)との共存で成功しているビジネスモデルの事例研究も重要と考える.(2021年3月7日)宮武恵子,菅原正博