先行研究の成果を基に、本研究ではファッション・デザイナーの製品設計のプロセスの一つであるテキスタイルの選定に焦点をあてている。大量の生地資料から使う生地を絞り込む際に、デザイナーの頭の中で描かれている事象・抽象的な偶像を具現化することを目的とした。テキスタイル選定の際に、何を優先するのか等の項目を抽出して、「選ぶ」「選ばない」の基準を探っている。研究方法は海外の文献2冊を資料として、テキスタイルに関する記述を検証する。そして、ファッション・デザイナーとしての、実務経験者にテキスタイル・ハンガー・スワッチを提示して、テキスタイルをグループ化する実験を行った。多くのデザイナーが、頭の中でデザインを想像しながら自身のつくる・つくりたいデザインに合ったテキスタイルであるかどうか判断して選んでいる。ここで言うデザインに合うとは、アイテム、シルエットまたデザインの詳細であるディテールの表現に適しているかいないかであった。デザインを想像している時に、デザインに合う素材であるかどうかの判断の基準は、素材の[weight][drape]「厚さ―薄さ」「硬さ―軟らかさ」などの物質的特性と「光沢感」などの質的特性を確認し、それらを総合的に判断して選定していることを明らかにした。 (宮武恵子 吉田ありさ 乾滋)