現在、アパレル業界では店舗・スマートフォン・ ソーシャルメディアなどのあらゆるチャネルをシームレスに連携させるオムニチャネルが発展していくとされている。また店舗・EC・ SNS・メルマガ・アプリといった顧客接点を拡大して、コミュニケーションを高める必要があるとも言われている。このようなビジネス環境の変化に伴い、ファッション情報を伝播するメディアも変化している。かつて情報収集の要となっていたファッション雑誌は、紙媒体として存続していくことの困難さが言われて久しい。筆者が2008年より毎年継続してきた消費者ニーズを捉える参与観察を用いた「ヤングファッションマーケット分析-リアルクローズの研究-」においても、研究の対象である女子学生のファッション情報収集方法の変化を捉えている。本研究では、この先行研究の時系列資料を基に、ファッションに関する情報収集・提供の経時的な推移を検証し実態を探ることを目的とする。研究方法は、先行研究・文献と前述した参与観察を基にした時系列データを資料として5つの視点で分析する。
結果は、まずファッションの情報発信の要となってきたファッション雑誌は、1990 年代から 2000 年代までは、モデル登用の仕方や編集の方法などを変えながらも支持されていた。その後、情報・通信 環境の変化により、受け手のファッションの情報収集の方法は大きく変わった。月刊が主であるファッション雑誌は、毎日更新できるSNSの情報提供の速さと量には敵わず、休刊/廃刊を余儀なくされている。若い女性のファッション情報収集の方法は、ファッション雑誌からSNSへと変わった。次に、現在、SNS の中でも特に手軽で文字数も少ない Instagram が流行やおしゃれに敏感な若年層に支持されている。彼女たちは、憧れのタレントやモデルの投稿を閲覧し、楽しみながら日頃のコーディネートの参考にしている。今後、アパレル業界においては、オムニチャネルへの展開が取りざたされている中、ますます SNS の情報発信は重要になりつつある。最近の傾向では、Instagram からも、その写真に写っているアイテムをそのまま購入できる仕組みが開発されていて、単なる情報交換だけでなく、インターネットの販売チャネルを拡大する可能性がある。