田中淑江 長谷川沙織 宮武恵子:世代に定着している卒業式の袴姿は従来の装いから変化し、華やかな傾向を示すようになった。本論文では卒業式の袴姿が変化した要因を考察するとともに、今後の和装文化の継承について検討することを目的とした。分析方法は、卒業式の写真の分析、従来の伝統的袴姿との比較、袴着用の定義や意識の傾向、ファッションの流行との関係などの分析を行った。これらの結果から袴姿の定義の変化、レンタル呉服業界の影響、伝統的袴姿の認識の薄れ、ファッションのターニングポイントなどが要因であることが明らかとなった。近年の和服離れの中、着物のファッション化による若い世代へのアプローチは必要である。しかし彼らに偏った和服の認識ではなく、守るべき和服の伝統と、現代化の両側面を学ぶ環境を整えることを今後の課題としている。