渡辺明日香・山口景子・高橋聡
ミニスカートやベルボトムジーンズなど、過去に流行した衣服が再び支持される現象をリバイバルといい、それらの衣服はレトロ・ファッションと称される(Guffey:2006)。こうしたリバイバルへの関心は、近代化、都市化が進んだ19世紀末頃から持たれるようになり、パリ・モードを事例とした20年周期説(Ricard:1983)をはじめ、定性的な考察が進められてきた。
発表者は、1970年代から現在までの約半世紀に及ぶ東京都内のストリートファッション写真を蓄積しており、これまで、ストリートファッションにおけるリバイバル現象を定性的に解明してきた(渡辺:2005ほか)。
近年、ファッションテック関連の研究が注目を集め、人工知能によるレコメンドシステム、トレンドの定量化や適正な在庫管理等、マーケティング分野での実用化も進展している。こうした背景から、本研究では、人工知能を用いてファッション画像を定量評価し、リバイバル現象のメカニズムの解明、および、将来支持されうるファッションの予測可能性の検討を目的とした。
分析に用いた人工知能はDeep Learningであり、画像認識において代表的なモデルとされるVGG16を使った。解析資料は、ストリートファッション写真をデジタルデータ化し、撮影年月日や地点を付与したデジタルアーカイブを用いた。リバイバル現象を人工知能で解析させるために、写真の被写体が着用している衣服が類似していて、人間が見てリバイバルとみなすことのできる画像の組み合わせ(1975年および2010年撮影)をサンプルとし、このペアが、人工知能でも近しい画像であると識別されるかについて、1975年と2010年を両端とする35年間を5分割し、各区分のどこと最も一致しているか判定させた(図1)。この結果、2010年に撮影された写真は、1972-1976とのヒット率が最も高く、人工知能によるファッション画像を用いたリバイバル現象における解釈・説明のフレームの一つを提示することができた。