日本のストリートファッションの変化をたどり、反体制的な態度の現れとして登場したファッションが、本来の前衛や反発的な要素を失い、ファッションの一ジャンルに成り得たように、ストリートファッションは、本来的には社会や大人や体制に抗う形で登場してきたものが、やがて、これまでの文脈と無関係に享受されるものに変換されることに特徴があることを指摘した。<ファッション>のオルタナティブとして登場してきたストリートファッションが、さらに文脈無関連化し、さらなるオルタネーターとしての存在に変容している点を指摘した。こうした享受の在り方が、洋服の歴史が長く、ともすれば固定概念にとらわれがちなファッション先進国の欧米より先んじて、日本で立ち現れている点に注目すべきであり、①欧米を参照していた日本のファッションが、逆にストリートファッションのレベルでは欧米から注目を集める存在と成り得たこと、②ファッションのイニシアチブを担っていたコレクションを頂点とするヒエラルキーが崩壊し、その根底に位置されていた消費者であるストリートファッションから、逆に新しい着こなしが生まれ、これが参照されるようになるなど、興味深い逆転現象が生じている点を報告した。