本論では、日本のファッション史を概観しながら、アメリカの影響がどのような形でファッションに体現されてきたかを検証した。具体的には、戦後から現在までを4つの時期(㈰戦後から1950年代、㈪1960年代―1970年代、㈫1980年代、㈬1990年代―2000年代)に区切り、整理・検証を試みた。これらの結果から、次のことが明らかとなった。第二次大戦後、洋装化を受け入れた日本が、高度経済成長の波に乗り、既製服産業を発展させ、豊かな日本を実現するに至った。やがて、1980年代、西洋服の既成概念を超えた作品を提案した日本のデザイナーの仕事を通じ、モード規範を越えたモードが最先端となる逆説が起こりえた。そして1990年代以降、ストリートファッションが、新たなファッションの発信源として注目を集め、影響を及ぼしている。こうした過程において、ファッション・システムから逸脱するという、新たなファッションにおける画期が訪れ、「アメリカらしいファッション」や「日本らしいファッション」という輪郭は見えにくいものとなった。