<写真撮影によって収集されたファッション>を研究対象とするエスノグラフィーの方法論について考察した。とりわけ、近年、あらたなファッションにおけるエスノフラフィーとして位置づけられうるファッション写真集を中心に具体例を紹介し、ファッションにおけるエスノグラフィーの研究方法の整理・検討を行った。<br>エスノグラフィーが「異文化」や「他者」の世界を理解する方法として発展してきたという、その原点にたちかえれば、ファッションを通した異文化や他者の理解の方法論としてエスノグラフィーは有効であろうし、また、必ずしも異文化や他者のみならず、同じ文化圏にありながら、異なるファッションを嗜好する理由を考えたり、他者でない、自分自身の経験や経年におけるスタイルの変化と、その背景を考える場合にも、エスノグラフィーは活用資源となりうることが示唆できた。<br>本論では、エスノグラフィーの方法論の多様さといった記述者側の問題でなく、エスノグラフィーの読み手の多様さにも開けるべきであることを強調した。日本のストリートファッションが海外で注目を集めた背景には、ブログや写真集等がはるかに先行して海外の関心のある人々に届いたからであり、こうした、準・エスノグラフィー的媒体が、アカデミックな研究よりも、大きな影響力を与えているという点がある限り、エスノグラフィーのこんにちの姿として、ビジュアル・エスノグラフィーのような、受け手の柔軟な接触と理解を許容しうるものを、研究対象にする必要性があることを指摘した。