本研究では,ビジネス用パンプスのヒール高さと年齢が歩行性能におよぼす影響について明らかにするため,7 名の若年群と5 名の中年群の女性を対象に裸足およびヒール高さ 3cm, 5cm, 7cm のパンプス着靴時に動作解析,筋電図,重心動揺等の計測を行った.動作解析において,右膝関節・右足踵関節の角度・角速度・角加速度について検討をした結果,一歩行周期において,最大値と最小値の差である振幅を⊿S として有意差検定を 行ったところ,ヒールの高さについて 3cm ヒー ルパンプスの右膝関節角度の⊿S と右膝角速度の ⊿S,右膝角加速度の⊿S が大きくなる傾向が見 られた.中年群でヒールが高く歩行が長くなると角関節の⊿S の減少が顕著となった.筋電計測により前脛骨筋,腓腹筋ともヒールが高くなるほど 筋電が大きくなり,中年群では若年群よりも顕著 に筋電の増大があった.パンプスのヒール高さと重心動揺の視点からは,裸足の時よりも 7cm ヒー ルパンプスを着用している時に重心動揺の総軌跡 長が増大し不安定になることが分かった.足圧計測で重心の軸の軌跡をヒールの高さで比較するとh3 と h5 ではあおり歩行特有のカーブがみられるのに対して,h7 では直線的な動きになっていた.