本研究では、体型変化が大きい中年期の日本人女性に向けて、フィット性の高いパンツ設計をするために、基礎となる下半身の体型分析を行った。
若年女性との比較では、JISサイズ規格の中心値である9ARサイズに焦点を当て、中年女性の9ARサイズ体幹相同モデルに、若年女性の9ARサイズパンツ原型を着せ付けて圧力分布を観察した。その結果、ウエストからヒップにかけての広範囲と前股ぐりに強い圧力が検出された。中年女性の特徴であるウエストから下腹部の突出が反映されており、パンツ原型からは、ダーツ分量や位置、形状、わたり幅のバランスと股ぐりカーブ形状に若年女性との差を認めた。設計の際には、中年女性用の原型が必要であり、ダーツ分量と位置、股ぐりのカーブ形状に留意して行うことが重要と考えられた。
主成分分析においては、先行研究において指摘されている代表的な体型特徴の他に、体の傾きに関しての特徴因子が上位に抽出された。計測数値においても若年女性より左右差が大きかったことから、経年による体のねじれや姿勢の影響が出ていると想定された。
クラスター分析では、4つの体型に分類出来た。周囲長が小さい2群と大きい2群に分かれたが、全ての群において、下腹部の突出がみられた。更に詳細な特徴をパンツ原型を作成して観察した。パンツアイテムはマーケットにおいて、他アイテムよりも比較的サイズ展開が多い傾向にあると思われるが、クラスター分析の結果を省みて、サイズ寸法だけで管理することは難しく、平面製図を行う際には、体型特徴が反映された原型を使用して設計する必要性があると考えられた。