本研究は、寄贈された原のぶ子氏の資料のなかから、デザイン画と実物作品を取り上げ、西洋と東洋(和)を融合させた作品に着目して、意匠と造形の2つの視点で分析を行うことにより、同氏の活動や功績を探ることを目的とした。
意匠分析より、和をイメージする形(アイテム、シルエット、ディティール)、和服地を用いた作品は作品発表の前半(1960年代)よりも後半(1980年代)に多くなっていった。これは洋服の普及とアパレル業界の発展に逆らっているように思われるが、そこに同氏の服飾研究家としての強い意志があるように感じられた。また、和服地を洋服に仕立てる技術は秀逸で、和服をイメージさせるものの、西洋の立体裁断技術を巧みに利用していることが明らかになった。
西洋と和を融合させた作品は、洋と和の衣服のデザイン・生地・造形すべてに精通した同氏でなければ成し遂げられなかった意匠・造形と考えられた。これらの作品を通して、西洋の技術を日本に普及させることと、日本の伝統を守るという服飾研究家としての功績が明らかになった。