特集「ブルームズベリーと音楽文化」の一部として掲載。ベンジャミン・ブリテンが作家E. M.フォースターに台本執筆を依頼したオペラ『ビリー・バッド』を、メルヴィルの原作との大きな差異である「艦長ヴィアの描かれ方」に注目して分析した。オペラ版はヴィアを全体の語り手としていることに特に留意し、結果として作品全体が主観的な「信頼できない」語りに貫かれている可能性、ヴィアのビリーに対する隠ぺいされた欲望の存在を、ブリテンやフォースターにとってのアメリカの位置づけや戦後イギリスにおける同性愛解放への歩みと関連付けながら論じた。