イギリスではなぜチャリティ(慈善)活動が非常に盛んであり、遊び心あふれる取り組みが日常的に見られるのか、という留学時に抱いた疑問の答えを探るべく新たに着手した文化研究の成果第一弾である。今回は2019年に現地調査を行った、イギリス北部の街ダラムにおける”Durham Cathedral in LEGO”というチャリティを取材し、ボランティアとして実際に関わった人たちにインタビューも行った。その内容および文献調査から浮かび上がってきたのは、現代におけるイギリス人の慈善熱の背景にあるのはキリスト教的な博愛精神や、階級社会が生んだ社会的義務の感覚である以上に、近代社会が成立した19世紀頃から見られる社交との深い結びつきではないかという仮説である。また、EU離脱を目前にしたイギリスにおいて格差がますます増大し、日々の食事にも困る人々が増えていること、そうした人々を支えるためのチャリティ活動も活発に行われているが、それは根本的な解決にはならないのではないかという疑問も生じた。