(第1研究) 修士論文を踏まえて,リスクマネジメント・安全教育の立場から,あらためて先行研究をレビューし6つの課題を明らかにした.その上で,看護学生の日常生活上のエラーと与薬エラーに及ぼす要因を検討し,さらにそれらを低減する訓練を開発した.
(第2研究) 認知的エラーに強い影響力を持つ「あせりやすさ」を制御する訓練を作成し,その効果を検討した.あせりやすさを解消するために3週間のスケジュール管理訓練を実施した結果,職業経験のない者にはスケジュール管理が有効であることを明らかにした.
(第3研究) 与薬の実行段階の誤薬やその知覚(過小評価や過大評価)を測定し,それらに時間圧力や被験者の動機づけの強さや学年差などがどのような影響を及ぼすのかについて60名の無作為化比較試験によって実験的に検討した.その結果,①時間圧力はエラーの正確な知覚を阻害すること.②学年差と自己効力感には交互作用が認められることを明らかにした.
(第4研究) 模擬的に与薬エラーを体験できるような訓練を構成し,その後に,参加者が互いにエンパワーしながら自身の危険行動の要因に気づくセッションを実施してその効果を評価した.エラー管理訓練後,参加者の自己効力感は一時的に下がるものの,セッション後には訓練前よりも自己効力感が高まることを明らかにした.