本研究では、遅くとも90年代から現在に至るまで、「障害のない子どももある子どもも共に育つ保育」の理論と方法に迫り続けてきた1名の元保育者(以下、A保育者)へのインタビューを行う。障害のある子どもの保育をめぐっては、社会情勢の変化に合わせて、障害児教育、小学校教育、児童福祉、医療、母子保健などの多方面から、様々な要求・要請を受けやすい(例えば特別支援教育体制整備など)。こうした要請との距離感を保ちつつも、いかに保育現場に根差した形で、日々子どもたちと関わりながら、「障害のない子どももある子どもも共に育つ保育」の理論と方法を導き出してきたのか。その経験と葛藤・工夫等を描き出すことで、幼児教育に関わる熟達者としてのキャリア形成の様相にも接近して検討した。(森依子・杉﨑雅子・中野圭子・広瀬由紀・真鍋健・ 守巧)