日本人の日常着であった着物は近代以降の洋装文化の受容や社会環境の変化に伴いその形状を改良する試みを幾度となくされてきた。本研究では戦後に取り組まれた「着物の改良」に尽力した一人である本学卒業生上田美枝氏に注目する。戦後洋裁ブーム、日本人の衣服革命といわれる時代に、多くのデザイナーは洋裁を取り入れた機能的な「新しいキモノ」の創出を試みた。一方上田美枝氏は、従来の伝統的着物の仕立て、日本人の衣生活に脈々と受け継がれてきた和服文化特有の慣習を生かした着物の改良に尽くした点が前者の着物の改良と大きく異なり特出する点であることが明らかとなった。