【目的】日本料理の椀種などに用いられる「真薯(しんじょ)」は主に魚肉をすり潰し、山芋や卵白などを加え加熱して調製する。従来真薯を調製する際にすり鉢を使用してきたが、現在はフードプロセッサー(以下、FP)を使用する場合もある。そこで、すり鉢とFPによる真薯調製法の違いが物性や食味に及ぼす影響を検討した。
【方法】真薯の材料は、すり身、卵白、大和芋、小麦澱粉、昆布だしを用いた。調製には、すり鉢(上部φ27cm×深さ10cm)またはFP(コンエアージャパン)を用い、すり身を撹拌(磨砕・粉砕)しながら副材料を混合し、ステンレス製の型に充填後、蒸し器で20分間加熱した。すり身のみをすり鉢・FPで撹拌した場合についても検討し、撹拌時間による違いを比較した。物性はクリープメータ(山電)を用い、真薯は破断強度測定、すり身はテクスチャー測定を行った。さらに真薯は、菜種法による体積測定と重量から比容積を算出、 色彩色差計(コニカミノルタ)による色の測定、実体顕微鏡(島津製作所)による観察および評点法による官能評価を行った。
【結果】1)加熱前のすり身は、すり鉢での撹拌時間が長くなるにしたがい付着性・凝集性が増すのに対し、FPは0.75分ですり鉢の約1/2の硬さとなり、付着性・凝集性は低い傾向であった。2)加熱後のすり身は、すり鉢による撹拌時間が長くなるにしたがい硬くなるのに対して、FPでは軟らかくなる傾向を示した。3)すり鉢で調製した真薯はFPと比べて破断応力、破断エネルギー、破断歪率が高く、弾力のある物性を示した。4)官能評価の特性評価では、すり鉢で調製した真薯は味があると評価され、嗜好においては、FPで調製した真薯の硬さが好まれた。
共著者:近堂知子,梅國智子,米山陽子,三星沙織,江木伸子,平尾和子