【目的】薩摩藩・島津家由来(鹿児島県)のかるかんは、明治以降に各家庭に広まった伝統的な菓子である。山芋の起泡性を利用して米粉と砂糖で作るが、家庭における伝統的な調製法はすり鉢を用いることが多い。最近ではフードプロセッサー等を使用し、手軽に調製する方法も知られている。本研究では、各種調理器具で調製したかるかんの外観、比容積、物性および官能評価による食味特性を比較検討した。
【方法】かるかんは、大和芋(2023年度千葉県産)、蒸留水、上白糖、上新粉をすり鉢、フードプロセッサー(以下FP)、ブレンダー(以下BL)を用いて混合し、型に充填後、30分間蒸し加熱して調製した。加熱前のかるかん生地は回転粘度計による流動履歴曲線の測定から特性値を求めた。加熱後のかるかんは比容積とテクスチャー測定、実体顕微鏡による観察を行った。官能評価は7段階評点法で行った。
【結果】すり鉢とFPで調製したかるかんはいずれも比容積が大きかったが、BLで調製したものは有意に小さかった。テクスチャー測定の結果から、硬さはすり鉢<BL<FP、凝集性はBL<FP<すり鉢、付着性はすり鉢≒FP<BLとなり、調理器具による物性の違いが認められた。官能評価において、BLで調製したかるかんは、特性評価では外観、断面のきめ、かたさ、弾力の項目での評価が低く、嗜好では全ての項目で有意に好まれなかった。BLで調製した生地は、流動履歴曲線の1 sec-1のずり応力が最も小さかった。BLは他の調理器具に比べて摩砕力が強いため、生地が気泡を保持できず、加熱後のかるかんは膨化しなかったと考えられる。そのため、かるかんが気泡のない外郎状となり、これが官能評価の低評価の要因と考えられた。
共著者:平尾和子, 江木伸子,三星沙織,米山陽子,梅國智子,近堂知子