本パネルでは、近代の女性の芸能の事例を個別に紹介する。映画も含む浅草公園の女性芸能について(横田)、最後の女役者といわれた中村歌扇について(土田)、また流行楽器の琵琶と少女歌劇の融合ともいえる琵琶少女歌劇について(澤井)、それぞれ報告を行う。
以上のような芸能・演劇は多くの場合、同時代から低俗なものとして蔑まれ、極めて特殊な環境で行われた特殊な芸能と認識されていることが多い。しかし、仮に低俗なものであったとして、それは芸の質だけの問題なのか、芸能に階層構造があるのならば、どのような制度的な問題がそこにあったのか、また特殊なものであるならば、その特殊性を検討する必要があるだろう。一方で、主流ではない周縁的な芸能であるからこそ、芸能・演劇あるいは芸術一般に通底する普遍的な課題が先鋭的な形で見出される可能性もあるだろう。個々の報告を通して、女性の芸能の制度的・環境的位置付けと芸能そのものの特質とその意義を検討する契機としたい。