豊島沙紀子、中西陽子、深津(佐々木)佳世子
【目的】東南アジア原産の植物Melinjo (Gnetum gnemon L)に含まれているポリフェノールのGnetin-C (GC)は抗酸化作用、抗がん作用が知られているResveratrol (RV)の二量体である。GCにはRV以上の抗がん作用があるとin vitroの実験データにより報告されている (N. K. Narayanan, et al, Cancer Medicine, 2015) 。本研究では、低酸素培養環境下におけるGCの効果とGCの作用機序解明を目的として検討を行った。
【方法】①培養MCF-7、培養ヒト肺がん細胞 (A549,HLC-1)、培養ヒト神経芽腫細胞(NB69) といった様々ながん細胞に様々な濃度のGCを添加し種々のがん細胞におけるGCの効果の検討を行った。②上記のがん細胞にGC 15 µMを添加して低酸素条件下にて培養を行った。③GC 15 µM添加の上記のがん細胞に各細胞死阻害剤を添加しGCが引き起こす細胞死の検討を行った。①、②、③ともにGC添加 (③では各阻害剤も同時に添加) 時を処理0時間として、処理後0, 24, 48時間の細胞生存数のカウントを行い、無処理群と比較してそれぞれの細胞種におけるGCの効果を検討した。また、リアルタイムRT-PCRによる遺伝子発現解析、ウエスタンブロッティングによるタンパク質発現解析を行い、GCが引き起こす細胞死の検討を行った。
【結果および考察】培養MCF-7, A549, HLC-1, NB69細胞に様々な濃度でGCを添加し、無処理群の細胞生存率を100%として添加培養0, 24, 48時間後の生存率を比較したところ、MCF-7, A549, HLC-1, NB69においてGCは濃度依存的に明らかながん細胞増殖抑制効果を示した。
低酸素培養実験ではMCF-7, A549, HLC-1, NB69における無処理群の細胞生存率はO2濃度21%よりもO2濃度2%の方が有意に低値を示していた。また、GCのがん増殖抑制効果はO2濃度21%より低酸素条件下の方が有意に低かった。このことからGCによるがん増殖抑制経路には酸化ストレス反応が関与していることが示唆された。
GC添加の細胞に各細胞死阻害剤を添加したところ、GCのみ添加した細胞と比較して生存率は有意に回復した。これによってGCによるがん細胞増殖抑制効果はフェロトーシスとアポトーシスを介している可能性を見いだした。
また、遺伝子発現解析およびタンパク質発現解析の側面からも検討を行い、興味深い成果が得られた。