[説明]
複数文化の接触後の構成を示すモデルとしてM&A研究等に導入されてきた「文化変容モデル」は、その端緒がBerry(1976)まで遡ることができる。本稿はこれをレビューすることで、いかにこのモデルが提唱されるようになったのかを示し、このモデルの問題点とされるものの原因はどこにあるのかを明らかにした。
Berryモデルとして知られる「文化変容モデル」は、2×2のマトリクスで示される簡便なものであるが、Berryの研究を追っていけば、このモデルは文化変容の類型を分析するために考案されたのではなく、少数民族対象の多数の質問項目を整理するための表として提示されたものであることが分かる。その後、この表が文化変容のパターンを示すものとして独り歩きすることになるのだが、元々が文化変容パターンを分析するためのツールではなかったために、複数の問題を内包したまま他の研究で応用が計られることになってしまったのである。